
私たちは峠上にあるガソリンスタンドに向かっていた。私たちとはもちろん1人は私でもう1人は教育担当になったA氏(私の中では隊長)である。
私は生来の優柔不断な性格で交差点侵入時に思いきれず黄色信号のまま通り過ぎたり果ては赤になるかならないかのギリギリの時もあった。
プロである先輩たちは歩行者信号を見て転滅し始めたらあらかじめ速度を落として黄色でしっかりと停止していた。それに比べて私は上手く止まれないままでいた。横乗りする先輩方の感覚の違いもあった。黄色で行けという人もいるし、いや、その前に止まれという先輩もいた。私は先輩方の指導の仕方に右往左往し戸惑っていた。
そして前述の隊長の登場である。隊長は降車している時は温和なおじさんであるが、トラックに乗ると豹変するのであった。これが実に隊長という表現がぴったりなのだ。黄色信号を予測して減速をし始めた私に向かって
「いけぇぇえええええええええ!!!!進めぇえええええ!!!!」
と雄叫びがあがり緩めていたアクセルを再び踏み直す私。赤になる寸前だったよぉ。。。「思いきれ!!思いきれ!!」とさらに言葉を浴びせてくる。応援してくれているのか情けないと呆れているのか分からない。手に汗握るとはこのことだ。
そして峠に向かうワインディングロード。ガソリンを満タンに積んだトラックはアクセルを踏み込んでもなかなかスピードがでない。それに合わせて峠道なのでカーブの切れ目から大型バスや乗用車が飛び出してくる。左サイドには側溝があって下手にハンドルを切るとはまってしまう恐れがある。めちゃくちゃ難易度の高い道だった。それでも、
「なお坊主ぅぅぅっ!!!もっとふみこめぇえええ!!!」
踏んでるし。踏みすぎるぐらい踏んでいるって。この隊長には積み込みや荷下ろしでもえらく怒られた。でも、トラックから降りると良き好々爺で私は好きだった。昭和の時代を駆け抜けてきたプロドライバーここにあり、である。