
私の心の中では教授、プロフェッサーと呼ばれていた(ご本人は知らないし言ったら怒られる)B氏。寡黙であまり言葉数は多くないが仕事に関しては哲学と信念を持っているプロ中のプロだった。教育担当のトップと言っても過言ではない。その教授がいつも口にしていたのが
「自分を疑え」
だった。私たちタンクローリー 乗りにとって積み込みや荷下ろしでの間違いは絶対許されるものではなかった。なぜなら危険物でありひとつ間違えば大事故につながるし人命にも影響を与えてしまうものだからだ。
なので訓練と称し徹底した確認動作を身体に覚え込まされる。ひとつには「だろう」をさせない。「大丈夫だろう」「閉めただろう」などの曖昧さを無くす為である。その徹底した訓練をクリアしないと実際の配送業務につくことは出来ない。
指差呼称の声のトーンまで厳しく指導された。何故にそこまでに???と思っていたら私の心中を読み取って教授は言うのだった「今、お前の中に迷いがあったな」とボソリ。そしていつもの「自分を疑え」だ。それだけ人間の作業には不確定要素と曖昧さが常に共存するのだと。
これほどまでのプロ意識と仕事に誇りを持つ人とはなかなか出会うことも無い。私はえらく怒られはしたが、仕事を自分のものにするためには自分という存在が一番の敵であるということを教授のB氏から学んだ。