転職が決まったものの実際にトラックに乗るまでにはまだかなり時間があるのと、自家用車で練習といってもサイズが違うので勝手が違うし事前に何か勉強できる具体的なものがないかとずっと考えていた。読書が好きだったので、本から学べることはないかとAmazonで検索したら

『交通心理学』蓮花一己 向井希宏 (放送大学教材)という本に出会った。この教材の中から勉強になった点をいくつか挙げておく
移動手段としての自動車操舵が、人間の生物的な限界を超えていることも指摘できる。人間の視覚や聴覚、運動機能は、たかだか時速4キロから6キロ程度の歩行に適したように発達してきた。P15
不注意という現象は人間の注意のメカニズムそのものに内在しているからである。P69
注意とは、多くの刺激の中から生活体(人間)にとって重要な刺激を選択し、その刺激に一定の強度で注意資源を集中させる働きのことを意味する。P71
人間の大脳の機能には限界があり(中略)こうした注意の機能の働きの中に、人間にとっての注意の失敗、つまりヒューマンエラーとしての不注意の原因が潜んでいる。人間は完璧ではなく、どれだけ努力しても注意の失敗と言われる不注意が生じる。P71
交通場面のように、四方から刺激対象が押し寄せ、しかも自ら走行して前方に常に新たな対象が出現する事態では、注意課題の困難さは想像を超える。P72
『交通心理学』蓮花一己 向井希宏著(放送大学教材)より引用
人間は迫りくる現象に対しての知覚そして認識、判断するということが苦手である。前方を見て知覚しているつもりでも実際に見えているのは中心視で捉える2度程度の範囲である。これを有効視野という。両側200度近くの範囲で見える周辺視野では色彩や形態の知覚認識能力は劣っているが、光刺激や明暗度の知覚認識は中心視より優れている、と概略書かれている。(P75-76)
目だけで物事を追うのでなく首を動かしてしっかり見るということの重要性はここに起因する。中心視をしっかり対象物に向けること。これが大事なのである。
最後にディノーメンについてである
ドイツの交通心理学者であったムンシュ(Munsch 1973)は「ディノーメン」という考え方を広めた。ディノーメンとはダイナマイトと現象という2つのドイツ語を一緒にした造語である。
『交通心理学』蓮花一己 向井希宏著(放送大学教材)より引用
例えば大型トラックで道路を走っていたとする。路肩に一台のトラックが路上駐車している。この一台のトラックがディノーメンである。このトラックの存在によって例えばその脇から子どもが飛び出してくるかもしれない、またはそのトラックを避けることによって対向車とぶつかってしまうかもしれない、そういう事故の起点となりうる存在である。このディノーメンの出現からどのようなことが起こりうるかをイメージし危険を回避していくということが求められる。