
タンクローリー に乗って配送先のスタンドへ行くと場所によっては道路から後退させて構内に侵入しないといけないところがある。片側2車線の道路もあれば片側1車線のところもある。ハザードを出して一旦停止しないといけない。スタンド構内に様々な障害物があれば下車してそれら障害物に当たらない様に三角コーンを立てたりする手間もある。道路を一時封鎖することにもなる。そうなるとだんだんと気持ちが焦ってくるのだ。クラクションを鳴らされたりすると一層焦り感がひどくなる。
この焦りが何につながるかというと、注意が散漫になってしまうのだ。早くトラックを後退させて構内に入れたい、道路を封鎖しているわけだから早くしなければ、と焦ると同時に気が後退地点一点に集中されてしまう。となると歩道を歩く人、自転車等に注意がいかなくなるのだ。いつの間にかトラックの後ろを人が歩いていたりとか自転車がさーっと通り過ぎていたったりすることが度々あった。もう少しで歩行者に当たりそうになったことも。この状況の難しさに頭を抱えていた私はとある先輩ドライバーに相談した。するとその先輩は面白い表現でこういった。
「ステージだよ。舞台。注目してもらうんだよ。パパーんってクラクション鳴らして!!」と。
そうここにタンクローリー がいるぞ、そして今から下がるぞ、というのをクラクションを鳴らすことでアピールする。それは同時にそれぐらいしないと歩行者や自転車に乗っている人はトラックの挙動を知覚できないということでもあった。この先輩の言葉は至極真っ当で名言だった。早速この先輩の言葉通りにトラックを道路脇に止めていざ後退させるときにクラクションを鳴らしてみた。すると歩いていた人や自転車に乗っている人がこちらに気付いて止まってくれた。
そうか。ひとり舞台なんだ。自分が主人公なんだ。お客さんに見てもらう様にアピールして道路バックすればいいんだ。この先輩のポジティブな思考様式にすごく関心したし実践してみうまくいったものだから殊の外納得した。トラックという無機質なものと人とのコミュニケーションの取り方ここにあり、だ。