
僕は長らく福祉の現場で仕事をしてきた。このブログでも何度か触れたが、その長年培った仕事をぶった切るように辞めて、タンクローリーに乗ることを決めた。そして実際にタンクローリーの会社に転職した。それが約1年半前のことだった。
油にまみれて毎日ガソリンの配送業務を行った。想像していたよりとても厳し世界だった。甘くなかった。人間以下のようなひどい扱いも受けた。でも僕は自分で選んだ道だから文句を言わずにこなした。かっこいいことではない。もうそこでしか生きていけないように追い込んだのは自分だから。
そんな過酷な日々の中、以前と変わらずにメールをくれる人がいた。僕に同情するとかそういう気持ちよりのメールではなく、自分の近況や何気ない話題を盛り込んで知らせてくれるのだった。その何気ないメールが来ると僕は胸が締め付けられるのだった。それはたった一本の僕が昔いた世界につながる糸でもあった。まだつながっている、というささやかな希望でもあった。でも期待はしなかった。戻らない、と決めていたから。
でもメールはその後も何度も来た。その人はどうして僕のことを気にかけてくれるのだう?油まみれで手の先はささくれ立ち、服はガソリンの匂いがまとわりつき、否が応でも現実が鼻をついて脳天に突き刺さってくる。そんな野良猫のように世の中の厳しさをまとわりつかせた感じの僕にとどく温かいメール。
そしてついに仕事を続けることができなくなってしまった。夜逃げ同然に仕事から逃げた。迷わず僕は元いた福祉の世界に戻ることにした。それは糸がまだつながっていたからできたのだ。道標。なによりもそれは生きていくための大事な運命の糸、だった。
その人は僕が福祉の現場に戻った時、さらりとなんとも優しいメールをくれたのだ。
「やっと元のなお坊主さんに戻ってきてくれましたね」
と。こんな優しいメールは僕のこれまでの人生で受けたことはなかった。
僕をサルベージしてくれた人。本当にありがとう。