
ここ数日ちょっと世間から離れ異世界を彷徨っていた。それはとあるサクセスストーリーに影響されたこともあり、おっちょこちょいな僕はまんまとそのストーリーに飲み込まれてしまった。
「俺も副業で一旗挙げられる!!」
とスイッチが入った。馬鹿である。そのサクセスストーリーの語り手はすごく話も上手だし聞いている僕は「がんばれば俺でもできる」という錯覚に陥ってしまった。今がんばっていないのは自分で、まだ頑張れる余地はあるわけだからその人と同じことをやれば僕も成功するはずだ。なんかすごくワクワクしてきたりしていた。生来の即行動的性格な自分はもう動いていた。
「不動産投資をしよう」
そして即、不動産会社に電話をしてしまっていた。行動が早い。早すぎる。中古の戸建てを見学する日時まで決めてしまっていた。今ある貯金といくらか分の追加をすれば購入できなくもない。算盤を弾いていた。「行ける。」「あとは会社が休みの時に資材を運んで自分でリフォームしよう」とイメージは膨らむ一方だった。そして幸せだった。なぜなら未来の自分は大金を手にして勤め人を卒業して悠々自適に暮らしているわけだから。
「?」
「いや、まてよ」
「おれ、リフォームとか好きか?」
「うん、好きじゃない」
「会社が休みの時にやるといっても労力は一人ぼっちだ」
「それで自立できるようになるには単純に今の数倍の労力でとりくまないといけないな」
「プロになって稼ぐって生半可な気持ちじゃできない」
と冷静になって考えた。そして不動産会社に断りの電話を入れた。現実をしっかり見ることにした。僕はそもそも商売に向いている性格ではない。がめつさもない。ストイックになる気力も体力も正直ない。今の仕事で手一杯だ。確かにそうやって成功した人がいる。それはほんの一部の人だからこそ情報として需要があるのだ。僕みたいな凡人には所詮そういうことは無理なのだ。「ほれみろ、そうやって諦めるからだめなんだ」と聞こえてきそうだ。おっしゃるとおり。でも諦めたんじゃないんだ。自分の力量をちゃんとわかって決断したのだ。しょせん僕とは住む世界が違うところの話だった。
さあ、僕は今の仕事しながら本を読んで、病気を治しつつ日々を大事に生きていこう。でも、アマチュア無線(7Mhz)のアンテナを建てられる戸建て物件は欲しいな。趣味でね。