目は口ほどに物を言う−仕事で僕は彼に負けている−

職場に苦手な人がいた。「いた」と過去形なので今はそうではないのだが、当時は退職を考えるほど嫌でたまらなかった。何がそれほどまでに嫌だったのか?退職まで考えてしまうほどのものとは何だったのか?僕にはうつ病という持病があって、もしかしたらうつによる心的な疲労感がそこに加わって余計に嫌になってしまったのかもしれない。顔を合わせるのも苦痛で、僕はそんな素振りは一切していないつもりだったが、嫌であることが伝わっていたのではないかと今では思う。どうやって伝わっていたかと言うと、こわばった表情とか、過度に神経を使った声掛けとか、体による表現とか、もう体全体から嫌であることがにじみ出ていたのだろう。相手も同じ人間だ、僕のそのような異様な雰囲気を感じないわけがない。相手もそんな僕をみて嫌な気持ちになったことだろう。嫌な気持ちになるから僕に対する接し方も冷たくなる。冷たくなるから僕もまた更に嫌になる。悪循環だ。

それでどうしたか?僕は退職に向けた転職活動を始めたのだ。先方に履歴書を送って面接手前まで手続きが進んでいた。迷いがなかったわけではない。引っ越しもしなくてはいけないし、いろんな変化に耐えないといけないという状況的には現状よりも大変になるからだ。うつ病持ちの僕はそれに耐えられるのか。。。悩んだ。しかし実は別のことで悩み始めていた。それはこの転職活動の理由が「逃げている」と気付いたからだ。逃げている、何から?それは「嫌な人から」だ。嫌な人はじゃあ新天地には一人もいないのか?そんなことはない。人間関係あるところどこにでも嫌な人の一人二人はいる。となると今逃げてもまた同じ問題が出てくる。そして転職を思い留まる決定的な理由がでてきたのだ。それは

「彼(嫌いで苦手な人)に僕は仕事で負けている」

と気付いたのだ。僕が嫌っていた彼は仕事に非常に真面目に取り組んでいて努力もしている。小さいところまでアンテナを張り巡らせ自分で情報を集めてそれを仕事に発揮している。資料も細かく読み込んでいる。人の話もちゃんと聞き良いと思うものは取り入れて実践している。そんなすごい彼の仕事ぶりに気付いたのだ。反面僕はどうだ?今の職場の不平不満ばかりを語り努力することをせず、これまでの経験だけで物を語っているだけだ。彼のように努力したか?情報を集めて実践したか?いや、いずれもしていない。そんな状態で新天地へ移ったって同じことだ。僕は自分の不都合を棚に上げてまた逃げ出すことだろう。そう僕は彼に負けていたから、負けているから彼を勝手に敵にして嫌っていたのだ。自業自得だ。そして完敗だった。

この自覚があってすぐに面接のキャンセルをし、僕は転職を止めた。僕は今の職場で頑張らないといけない。彼のように努力をしてそれでも自己成長が望めないのなら転職しても良い。でも今は転職はだめだ。永遠に自分の弱さに負けて逃げることになって全てを失う羽目になる。彼のように資料を細かく読もう。隅々までアンテナを張り巡らせ仕事に反映させよう。そう少しでも彼に近づけるように。努力を、今一度新人のように考えをリセットして真正面から仕事に取り組もう。そう思った。

自分を彼と相対化させて何が自分に足りないか、そして彼がどんなすぐれたものを持っているかを探し始めて僕は彼を見る目が変わった。そう尊敬するようになったのだ。そこから不思議と彼も僕に対して心なしか優しく接するようになった。不思議なものである。たかだか僕が考え方を変えただけである。たったそれだけのことで人間関係が大きく変わるのだ。目は口ほどに物を言う、その言葉を思い出さずにはいられなかった。

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